講演会
●第8回医療制度研究会講演会講演要旨
「21世紀に向けた病院経営−病院内外のマーケティングについて」
鎌倉湘南病院名誉院長 鈴木隆夫先生
1.医療はサービス業
病院の使命はなにかという問いに、病院の視点(ニーズ)に立ったサービスの提供であると定義される。大学病院では研究と教育と定義されることが多く、サービスと定義されることは少ない。日本では今まで、医療事情に十分対応する豊富な資金があり、病院はそれぞれの立場で競争もなく存続が可能であった。高齢化、低成長時代を迎え、出来高払いから包括払い、老齢に伴う疾病構造の変化、顧客意識の変化、高度医療技術の普遍化などにより、医療に使用される資金を多くの医療機関の間で奪い合わねばならばならない事態になった。また定額払いが導入される情勢では否応なしに在院日数の低下が行われるようになり、余った病床は閉鎖するか、新しいお客を獲得しなければならない状況に追い込まれている。人口構造、技術の変化は技術の普遍化をもたらし、病院間のサービス競争が生じる時代になった。いつのまにか中心的な勢力はいままでの提供側である医療側から、支払い側つまり受療者に移行してきた。
2.マーケティングは病人のニーズに合わせた仕組み作り
顧客のニーズに経営を合わせる手法がマーケティングである。マーケティングはしばしばセリング(売り込み)だけが強調して使われることが多い。売り込みはアクション(例えば訪問して宣伝するなど)を手段として行われるが、結果としてもたらされる利益は短期的なものである。これに対して本来の意味でのマーケティングは、顧客のニーズに焦点を当て、それに合わせた仕組みを作ることと定義される。したがって、もたらされる結果は短期的ではなく、明日の利益につながるものとされる。
黙っていても数多くの顧客が来院した時代には管理が良ければ利益が生じた。組織の目標も効率よく利益を上げるための管理に置かれ、病院管理学が重視された。しかし顧客獲得が争われる競争の時代を迎えた今日においては、病院の外にある顧客にいかにして病院にきてもらうかが重要となり、顧客のニーズつまり外部の変化に柔軟に応えられる組織作りを行うという考え方が必要になった。顧客は外にあり、変化しやすい。求められるものは、安定を指向し変化を嫌う管理ではなく、病人のニーズに適応する柔軟な仕組み作り、つまりマーケティングが重要視される。
3.企業の成長の原則
事業の成長の原則は支出を抑え、収益をあげる企業活動を実行する仕組みが出来ていることであり、事業成長の条件は顧客に喜びをもたらす能力が企業にあることといわれる。言い換えれば、顧客を創造し、需要を作り出すことが可能な「効果」があることであり、利潤を拡大し、拡大再生産が出来る「効率」が組織にあることである。これを「効果的効率主義」と呼んでいる。
「効率」は病院の内で発生する。生産性の向上、疾患別コスト削減、稼働状況の再編成、在院日数の短縮、医師の勤務態勢の監視等であるが、経費を削ることで病人にとって、無理な治療を強いることになったり、古い機械を無理して使い、精度を落としたりする問題が存在する。この内部への管理は顧客のことを考えに入れていない。経営が行きつまると「効率」が追求されるが、この考えは顧客を減らすことになりさらに業績が悪化する危険をはらんでいる。
反対に、効果主義は顧客を中心とし、患者に喜びの投資を行うというもので、マーケティングの基本である。「効果」は顧客のニーズ、顧客の喜びを基準にするが、これは不安定で、不確実、したがって高リスクであり、経営の方針とするには勇気が必要である。しかし、顧客の数が減り競争が進んだ社会では効率を求めるより、損して得取るという昔の商人的な発想も必要となる。客の喜びを中心にした「効果主義」を基本にした組織に変換することが生き残りの条件とされる。
4.病院が行う顧客への投資
病院として顧客の満足のために何を行うかと言うことは、なかなか難しく限りがない。何を目標とすべきかを考える手法の一つにベンチマークの手法がある。これは基準値を決定し、それを目標として経営改善をするやり方である。基準値になるのはグループ内の一番良い業績を上げている事業所の成績であったり、地域内のライバル企業の成績であったり、優れた経営機能革新を行っている企業の成績であったりする。湘南鎌倉病院では、医者別に腹腔鏡下胆嚢摘出術の原価比較を行なっている。術者間の原価の差を決定する大きな要因は材料費であった。そこで最も低かった医師の原価をベンチマークとして、これを達成しなかった医師には、材料費削減のために手術手技の改善が要求される。こうして少ない費用でお客に喜んでもらうという考え方を実現することができる。
5.顧客の進化
一方顧客に対する分析も経営戦略の基本である。顧客は医療に関係がない大衆(Mass)の中から、口コミなどに反応する可能性がある見込み客(Prospector)がいる。この段階では何処の病院を受診するかまだ決められていない。その中からいわゆる一見客である顧客(Customer)が初めて来院する。この中で満足して帰った人々が再び来院するようになり、再来客(Repeater)が出来る。Repeaterは病院の代弁者(Advocator)となり評判を広げることになり、最終的にはパートナー(Partner)と呼ばれるまでに進化する。徳洲会のある病院ではPartnerにあたる人の協力で銀行の融資が成立したこともあった。しかし、この進化は自然には成立しない、この課程に進化をもたらすこと、つまりRepeaterをどうやって増やすかが重要な課題になる。売り込みにより顧客を確保するSellingに比べて、Repeaterを作る仕組みを完成させることは明日の高収益をもたらす戦略であり、これをサービスマーケティングと呼び重要視している。これがマーケティングのメインのテーマでもある。
<顧客の進化>
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6.高いポジショニングをねらう。
病院の経営に関係する概念に、ポジショニングという考え方がある。つまり、病院の収支が合って経営が何とか出来ているということだけでは不十分で、その地域あるいは業界で、高いポジショニングを取ることは重要なことと考えている。ポジショニングが高ければ、病人の信頼度は高くなり、優秀な人材が集まり、有益な情報が収集でき、金の流れはスムースになり、利益率などにも多大な効果を生じる。言い換えれば、病院が高いポジショニングを狙うことはお客さんへのサービスであると考えている。ポジショニングは客の共感に基づいている。病院として、共感を呼ぶような他にない高いレベルの特色が要求される。これは商品で言うブランドイメージに相当するものである。ブランド商品は品質の高い商品を継続的に提供できることが資格となる。病院においては質の高い医療の継続的提供ということになるでしょう。
7.病院サービスの特徴
医療でも、一般産業界でもそうだが、サービスには目に見える部分と目に見えない部分が存在する。目に見える部分はハードに属するものである。自動車産業のように、目に見える部分が大きいものもあれば、医療のように目に見えない部分のサービスが大きいものもある。病院のサービスで目に見えるものは、建物の大きさや設備等に当たる。しかし、大部分は目に見えないサービスである。
病院で行われるサービスにはまたいくつかの特徴がある。DRGの手法は、医療サービスの質を、合併症、感染率、平均在院日数、再入院率、退院後6週間死亡率、全体的な治療効果などを数字で表している。これは医療側が考えるサービスの評価である。しかし、医療側が考える医療の質と、客が感じる評価との間にはギャップがある。また医療サービスは、生産の場所と消費の場所が同じであり、現場に直接病人が存在するということも特徴といえる。例えば、心カテなどサービスが行われる場所が、同時に料金の発生伴う場であり、サービスの現場にはお客が必ず存在する。心カテ術中の私語が、その場にいる病人の不安を増幅するなどの現場を考えてみれば理解できる。製造業にはこのような構造は存在しない。
病院のサービスを分析すると、いくつかの系統に分けられる。医師の服装や態度など、スタッフの態度に関係する「態度的サービス」、不安定な病人の精神面の要請に応える「精神的サービス」、また、あまり良いものではないが、値段をまけるなど提供側の犠牲に基づいて行う「犠牲的サービス」などがある。そのほか機能が複雑な病院では、物理的なものの組み合わせの中で行われる「機能的サービス」などが最も重要視される。
8.受療者から見た医療サービス
サービスの価値は次のような式で言い表すことが出来る。
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| 価値・感動(Value)=質(Quality)/費用(Cost) |
従来、医療における高い価値を得るには金がかかると考えられていた。この考えは今や正しいとはいえない。良質で費用が少ない医療が求められる。
受療者が感じる医療の質は次のような式で考えることが出来る。
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(1) 質=実績−期待度
(2) 実績=結果+経過 |
(2)の式でいう結果とは例えば手術の成功であり、その本質は専門的技術や専門的知識が中核になっている。これは主に医師を中心とした専門集団できびしいトレーニングや勉強により身につくものでしょう。経過とは入院してから退院までの期間に発生する問題である。手術の結果が良くても、医師の回診がない、説明がない、看護婦の態度が悪い、食事がまずいなど、経過に満足が無ければ、実績は低く感じられる。その本質は人と人との接点で生かされる”対話能力”が中心になっている。この部分はお客の感性に頼るもので、数字には表されない。また、急性期の病院では、客は病気の治癒、すなわち結果を求めて入院してくるから、期待度は高い。期待が実像よりあまりにも大きければ、結果がよいことだけで必ずしも客の感じる実績(感動)にはつながってゆけない図式が存在する。また病気には不幸な転帰を取るものも多く、助かる見込みのない病人にとっては、結果は当初から望めない。残された経過に対する満足がなければ(1)の式が表すように質の評価は非常に低いものになる。No CPRと決定したとたん医療側が手を引いてしまう状態があれば、家族が感ずる質は極端に低いものになる。助かる見込みが無ければ、せめて経過にと、期待を寄せるのは当然だから、これがなければ家族が感じる質はマイナスになる。マイナスの質は怒りになり、こうじれば訴訟になる。反対に質が高ければ大きな感動を生むことが可能である。患者さんの主観にかかる問題であることを良く認識することが重要である。
9.費用の問題
患者さんが支払う費用はサービスの立場から考えると次のように考えられる。
費用=原価+患者が支払う費用
という式である。原価は薬品、消耗品、人件費などであり、医療側から見ればこれを切りつめることだけが経営の目標となりがちである。しかし、患者さんが支払う費用はお金の他にも、目に見えない痛み、つまり長い待ち時間であったり、未熟な注射による痛みであったり、医療側がする不用意な発言による精神的な痛みであったりする。そして医療の世界で病人が支払う最大のコストは医療側のミスによる生命の損傷ということになる。患者さんや家族にとって、この見えないコストを切り下げるために、いかに努力や投資をするかが最も重要であり、これを「喜びの投資」と呼んでいる。経営が逼迫すると、この様な投資はなかなかやりにくいがこれは未来への投資である。Low
Cost and High Qualityという経営理念のなかで、薬品費、材料費に関する経費節減とともに、この病人のコストを下げるための投資も、Low
Costを決める要素として大変に重要である。
企業が顧客を失う理由を調べた研究がある。低い順から、死亡1%、移動3%、友人の影響5%、ライバルの引き抜き9%、商品(病院の技術)の不満14%、従業員の無関心な態度68%であったという。病院の改革は最後の68%に向けられる。技術的な低さが訴訟につながることは少ない。多くは従業員の態度に関係する。病院の中を改革するのに重要な視点である。
10.価格政策
同一の診療報酬体系の中で、価格に差が有ると言うことを、一般の人々は誰もが気がつかなかった。近年同じ手術でも施設によって価格の差があることを受療者が知り始めている。例えば腹腔鏡下の胆嚢摘出手術は、入院では72万になるが日帰り手術ではこれが46万になる。健康保険組合がそのコストの差に関心を持てば、日帰り手術を受けるように指導され、価格の安い機関が選ばれるようになるのは当然の帰着でしょう。同じ手術で費用が安く、医療の質が高ければ顧客はそのような病院に集中し病院の格差が広がる。日帰り手術がもたらす影響は内部だけでなく外部に置いても大きい意味を持っている。ちなみに湘南鎌倉病院での日帰り手術は5年間で6000件を越える。
11.医療における補助的サービスの重要性
医療サービスには、直接医学的技術が関係する「中心的サービス」と、病人の日常的なニーズに関係する「補助的サービス」に別けて考えることが出来る。技術が関係する「中心的サービス」は技術のレベルを有る程度要求する。しかしある程度充実されてしまうと、それ以上の進歩があっても顧客の満足度はそれに比して伸びなくなる。PTCAにかかる時間がいくら短くなっても満足度は比例して大きくならない。胃ガンの手術は3時間が1時間になると、満足度は増加するが、それ以上短くなっても患者の満足には繋がらない。日帰り手術が導入された当初は、涙を浮かべて感動して退院された方もいましたが、いまは飛躍的に進歩した日帰り手術を提供しても、患者さんの喜びは次第に少なくなり、日常的な普通の出来事としてとらえ、以前のような”感動”は少なくなっています。一方「補助的サービス」は、これを求めてくる訳ではないが、うまく行われれば病人の感動は大きい。看護助手職員が身体をさすってくれる、声をかけてくれたり、身体が不自由なために出来ないでいる買い物など、日常的な手伝いをしてくれたりすることは、期待外のサービスであるだけに、充実すれば・u毆)するほど満足度は増加する性質がある。また中心的サービスの質が下がると満足度は明らかに下がるが、補助的サービスは少し欠けても変わらない性質がある(図表参照)。消費者の満足には補助的サービスが大きな役割を握る。
<顧客の満足度とサービス>

12.リピーターの重要性
視点を変えて病院が得る利益について考えてみよう。病院の利益は短期的に見ると、
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| 今日の利益率=1人当たりの利益×再利用者数/投資額 |
で表され、再利用者が関与する要素が大きい。一方、明日への投資は次の式で表せる。
であり、期待よりも大きな価値を作ることが重要となる。他の病院、また同じ病院でも前の主治医が質の高いサービスを提供していたとすると、後任の医師が普通のサービスをしても満足してもらえない。期待以上のサービスを作り出す難しさがある。一方、リピーターは過大な期待をしないから、この面からも病院にとって有り難い存在である。
生涯価値という概念がある。例えば、一人の医師が車を買って気に入ったとすると、結婚すれば妻の車、病院の幹部になれば病院の公用車や訪問看護の車にまでその影響が及ぶ。修理やメンテナンスを含めると、この一人のリピーターの生涯価格は、この自動車会社にとって2千万円を超す価値になってしまう。人一人がリピーターになることでその人は一生涯病院の顧客の需要を産むことになる。
日本の医療費は一人23万円、湘南鎌倉病院の年間売り上げ130億円、大まかなところで6万人の顧客を確保しなければならないことになる。生涯価値という考え方を持たないとリピーターの本当の意味を理解しないし、リピーター創造への動機付けが職員に理解してもらえない。
13.病院に求められる人材
病院のサービスにはそこで働く人材が大きく関係する。病院に求められる人材の要件の中で重大なものは、専門的な技能や知識と対話能力であるといわれる。医療関係者の中には、専門技術が優れていても対話能力が乏しい人がいる。残念ながら医師の中には、ストレスがかかったときに対話能力を欠いてしまう、いわゆるプツンする人が多い。専門的技術だけでは受療者が満足する時代は終わっている。対話能力がない人材はお客の前には出さない、客には接しない部門に配置する配慮が必要である。患者さんとの挨拶や会話の出来ない医師、自分の技術にうぬぼれて人を人とも思わない医師は、もはや存在する場所が狭くなっている。つまり全人格規模の大きさ、包容力の大きな人で技術と対話能力を兼ね備えた人材が病院では求められる。対話能力は技術の至らなさをもカバーすることがある。図式では次のようになる。
<病院に求められる人材>

14.病院に求められる組織作り
右肩上がりの医療構造が崩れつつある今、組織の面でも新しい改革(Innovation)が求められている。組織の運用のあり方を変化させることは病院経営者としてのツールの一つである。
今までの病院は院長をトップとするヒエラルキーにより運営されている。つまりピラミッド型の構造で、末端は上層部の指示で動くようになっている。どちらかといえば、官僚、軍隊組織の中にこの典型を見ることが出来る。しかしこれは顧客へのサービスを重視する構造には向いていない。国公立の病院や大学がサービスの改善を叫んでも、このヒエラルキー構造を温存するかぎり、改革は中途半端なものになってしまう。顧客に接触する現場スタッフの判断でサービスが行われる場面が多く、それを中間層や上層部がサポートする構造を早急に必要としているのではないか。それは現場が直接接触する場面でしかサービスは発生しないからです。ここにもサービス業の特色が有ります。ここにこれまでの病院管理手法とは180度異なり、顧客を頂点に、上司は部下が働きやすいようにサポートする、逆ピラミッド構成の柔軟な組織に変わることが要求されている。私たちも実験が始まったばかりではあるが、新しい変革の目標としたいと思っています。
組織の変革(Innovation)は新しい技術を導入するために組織を変更することだけではなく、自分たちが作ってきた、過去のニーズに合わせたシステムをもう一回ひっくり返して、今日のニーズに対応する組織に組み替えることが重要である。例えば、日帰り手術を効率よく実践するために、朝早い全身麻酔が出来る組織作りが必要であるが、既存の組織管理の上では、朝6:30入室、午前7:00執刀を可能にするような改革は難しく、多くの病院が現場の反対で、過去のしきたりの中でやむなく日帰り手術を行っています。この過去のしきたりが新しい技術の導入と、それに伴う組織運営のイノベーションを妨げている。イノベーションは、経営者にとって、まさに改善、改革のためのツールであり、学び実践することが出来る手段であることを忘れてはいけない。
顧客の進化をもたらすことが重要な目標であることは先に述べた。顧客が階段を登り詰めるということは、言い換えるとサービスも進化することである。サービスには良いサービスから始まり、賞賛されるサービス、神話となるサービス、伝説になるサービスへと進化する。こういった伝説となりうる様な病院を作ることが私たちの大きな目標であり、これに向けて努力を行っている。
15. 終わりに
病院経営はいま難しい時代を迎えています。支出管理だけで経営が出来た時代はおわり、埋もれている顧客に病院に来てもらうことから始まり、競争に生き残るために、顧客に期待以上の質の高い医療を提供する。しかも、質の判断は医療側ではなく、受療者からみた質であり、感動を持って帰ってもらことが出来る病院サービスに切り替わっていく必要がある。そのためには多分、出来高払いのヒエラルキーの構造を、顧客中心の構造に転換されなければならないと考える。いままでやってきたこと、今後やろうとすることをふまえて、この様な目を持って考えながら病院の運営を行っている。
16.質疑応答
| 質問: |
サービスの考え方を病院スタッフ、特に医師に浸透させることは難しいと思うが? |
| 回答: |
医師の教育で必要なことは。繰り返し行うことが重要である。何回いっても変わらないという幹部職員に「院長が言うことをやらなくてよいと言っていないか」と問うことにしている。繰り返し言っても指示に従わない、それであきらめると言うことはまさに、”指示されたことはやらなくても良い”ことを職員に教育していることになるという意味である。指示の中途半端は良くない。また面接の時に自分たちの考え方をはっきり告げ、就職時から病院の考えを徹底することも重要である。
評価の基準になる考え方の例としてアメリカの、レジデントの評価の仕方をあげる。レジデントの資質として、病人とのコミュニケーションがとれることが最も重要視される。次に看護婦、次に同僚医師との仕事、コメディカルとの仕事、上司との仕事の順に評価される。これらの能力が出来ていれば自然に技術能力は付いてくるという考えである。 |
| 質問: |
患者には過度の期待、場合によっては誤った期待を持つ人がいる。対策は? |
| 回答: |
事前に期待はコントロール出来ることもある。それは正確な情報を伝え、起こりうる不利な結果についても知らせておくことで過度な期待を持たせないようにする。また、小さなことで期待を上回る成果を示すには、期待外の心配りをすることで、顧客は予期していなかっただけに喜びは大きくなる。いずれにしても大切なことはインフォームドコンセントをしっかりすることが、期待のコントロールには一番の方法と思っています。 |
| 質問: |
逆ピラミッドの組織についてなにか具体的な考えは? |
| 回答: |
逆ピラミッド型の組織は、経営軸が管理からサービス業に代わったときに生まれる。現在、病院経営システムは多くが医師を頂点とするヒエラルキーにより動いています。ヒエラルキーでは上意下達がその基本ですが、サービス業では顧客に接する現場が最も重要な場面となります。ここでは臨機応変なサービスが求められるため、上意を求めて動くヒエラルキーで型ではサービスの提供が充分で無くなるおそれがあるからです。衆知を集め、各現場からのニーズに合わせるためには、ヒエラルキーからマトリックス型への転換が必要となってきます。逆ピラミッド型とは現在での動機をサポートするために中間層や上司がサポートする組織作りが必要となるからです。 |
| 質問: |
職員への意識浸透を図る有効な手段は? |
| 回答: |
患者からの投書を大切にする。退院時に具体的な感想も書いてもらっている。投書は職員と病院にとって、サービス改善のためのテキストだと考えています。また大切なことは、言ったこと、指示したことは完結するまであきらめずに、繰り返しチェックをしてゆくことだと思います。もしそれでも出来なければ人の配置を間違えたことになりますから、その方向で人を入れ替えなければ、指示したことが無意味になり人は指示に従わなくなるでしょう。 |
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感想:病人に対するサービスをここまで徹底して理念の中に取り入れた病院経営者がおられることに感銘を受けました。マーケティングという言葉が病人のニーズに合わせた仕組み作りであることや、サービスについて科学的でわかりやすい分析にも感動しました。
顧客ニーズに合わせた医療は21世紀に向けた医療の基本であり、先生の言われる 受療者から見た Low Cost and High
Quality が医療本来の姿勢として追求されるべきものと考えます。自己負担増にせよ、保険料の増額にせよ、国民の負担増が見込まれれる将来の医療システムでは、病院経営にも、なおさらこの方向が要求されることになるでしょう。しかし同時に、経済面ばかりを考えた、医療制度改革は、患者さんから見てHigh
Cost and Low Qualityという結果になる可能性も同時に含んでいます。そうならないように、私たちも勉強を重ねる必要があると思います。
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