医療制度研究会 〜21世紀の医療を共に考える会〜

第1回 〜 第10回 > 第2回 日本の医療制度とその問題点

講演会

●第1回医療制度研究会講演会講演要旨

「日本の医療制度の現況」


慶応大学医療政策学科 池上直己教授
1. 医療保険は2つの考え方があり、個人負担を基盤にする“自由”と、社会責任を基盤とする“平等”の対立する概念を形成する。これまでの日本の政策は“自由”から“平等”への歴史があり、これからの医療政策は“平等”から“自由”のトレンドが論議されている。この観点から平成9年度における自己負担の拡大がおこなわれ、与党案では混合診療の容認、施設利用料の自由化、薬剤の高額分の自己負担等が論議されている。

2. 教授の見解では、患者自己負担の増加は、現行では高額医療費制度があるので、医療費の大部分を占める高額医療費(参考1)の部分では受診の抑制にはならない。受診抑制の効果が出るのは予防に当てられる部分であり、大幅な削減は期待できないばかりか、有効な予防医療の効果を削減することは、医療の効率から考えて妥当性に疑問がある。

  混合診療は、国民の権利として定着している医療の平等性に格差を導入することになるし、国が保証する医療とそれ以外には線引きが難しいなど、技術的な問題がある。短期的には、この方法は医療費を圧縮することは出来るが、アメリカの病院における個室の普及や、高度先進医療が順次保険に収載されていることを考えるとむしろ医療費高騰につながる可能性がある。
参考1: 医療費のレセプト点数を、高額な順からならべてその金額の分布を見ると、上位25%が全体の医療費の3/4を占めている。
3. 日本の医療制度の特徴は診療報酬(公定価格)のもとでの出来高払いである。医療費の抑制は保険点数の調整で行われる。近年の点数改訂は、物価や人件費にスライドさせないことで抑制を掛け、不適切に増加した部分、例えばCTスキャン等については、点数引き下げでバランスを取ってきた。先進6ヶ国の中での日本の医療支出はイギリスに次いで低い。

4. 価格統制に対する対応は医療機関に求められている。圧縮可能の分野は人件費の構成比が少ない分野つまり、検査、薬剤オーダー、判断、処方時間であるが、人件費の構成比が高い分野は合理化が難しい。国際比較では日本は検査、薬剤が多く手術は少ない。手術のしめる比率が高くないのは、医療の質が予防的な部分で有効に働いているという見方もできる。

5. 病院は医育機関、公的病院、私的病院とあり、病床数は私的病院が多いが、手術件数は公的病院が多い。

6. 補助金は診療報酬の赤字を補うために使用されているが、いくつかの問題がある。
  補助金を受ける公的病院は設備の拡充を行えるので、私的病院との格差が生じ結果的に大病院集中を招いている。また補助金を受ける公的病院は、不採算部門を担当しているという理由で経営努力が行われない傾向がある。配布は国公立に99%というように交付のルールが確立されていない。自治体により交付基準が違うため、県と市など自治体間でで調整がうまく行っていない等である。
  教授の見解では、高機能病院に特定の治療を集中させることは、先端技術にかかるコスト、とその技術に伴う死亡率を低下するとの調査結果から、補助金による高機能病院への先端技術集中は妥当と考えられており、目標値の達成度に応じた補助が行われるべきであるとの見解であった。

7.薬価制度の問題点。
  メーカーの競争により価格も下がる利点がある。承認基準、薬価設定が不透明だが外圧により改善されている。給付基準額制度は先発後発の薬に格差が無くなってしまう。完全統制化の弊害が出ることが予想される。

8.支払方式
  出来高払いの弊害は請求業務が複雑であること、レセプト審査で一貫性を守ることが難しいこと。人よりものが優先される。包括化の利点は請求業務が簡単であり、包括化料金の範囲内では医師の裁量権が大きくなる。また評価の統一基準が作りやすい等である。

9.包括化のための準備
  差益確保のため起きる過少医療を組織的にチェックする体制や、重症者より軽症者に有利な経済的な理由から、不当な転送を防ぐ担保が必要である。
  また教授は外科手術などの高次医療は、コストも質も高次医療機関に集中させた方がいいので、補助金の配布と抱き合わせて包括料金による医療費削減を提唱されている。補助金の交付は都道府県単位で、病院毎個別に目標を決め、その達成度に応じて支給し、包括料金のレベル、目標達成度も過去の実績を基準にする。方法がよいと考えておられる。

10.包括支払方式についてはDRGが考えらており、将来この方向が検討される可能が高いが、現在の日本では導入する上でいくつかの問題点があり、日本型の修正が行われるであろうが、大病院に限って施行される可能性は高い。

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感想:
  御講演の中からいくつかの認識すべき点を御指摘いただいたように思います。
  中でも患者自己負担の限界、補助金のありかた、包括医療は、病院医療者全体として考えるべき問題であり、具体的な考えを持つ必要があります。他に大きな問題としては、混合診療があり、先生は批判的な考えをお持ちですが、可能性として考えの中に入れなければならないと思います。考え方はなにも現行のシステムにこだわる必要はないので、たとえば補助金が公的病院に限るべきではないというような議論があっても良いと思います。また補助金による病院間の利害により、病院間で一致した考えを形成するのが難しいという議論がありましたが、事は国の医療をどうするかと言うことであって、一医療機関の問題におろす必要はないと考えます。色々な分野で活発な議論を期待しています。どの手段でも結構です御意見をお聞かせ下さい。
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