医療制度研究会
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緊急勉強会のお知らせ(診療関連死の死因究明等の厚労省第二次試案
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2007年11月24日
虎ノ門病院小松秀樹氏の緊急投稿「日本医師会の大罪」
小松秀樹氏 緊急投稿「日本医師会の大罪」
虎の門病院 泌尿器科 小松秀樹
○国民と患者のため、医療の改善と向上のため、現場の医師による自律的な集団が必要である○厚生労働省は医師に対する全体主義的な統制を行う強大な力を手に入れつつある○過剰な統制は自律性を奪い、医療システムを破壊する○日本医師会の役員の一部は全ての現場の医師を裏切り、厚労省に加担した○いま、日本医師会に対し、現場の医師は自らの意見を明確に主張しなければならない○国民と患者には、自分達自身と家族のために、現場の医師を支援していただきたい 07年10月17日、厚労省は診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する第二次試案を発表した。その骨子は以下のようなものである。1)委員会(厚労省に所属する八条委員会)は「医療従事者、法律関係者、遺族の立場を代表する者」により構成される。2)「診療関連死の届出を義務化」して「怠った場合には何らかのペナルティを科す」。3)「行政処分、民事紛争及び刑事手続における判断が適切に行われるよう、」「調査報告書を活用できることとする」。4)「行政処分は、委員会の調査報告書を活用し、医道審議会等の既存の仕組みに基づいて行う」。 第二次試案は、この制度の検討会の座長で刑法学者である前田雅英氏の主張「法的責任追及に活用」(讀賣新聞07年8月14日)に一致している。法的責任追及という理念の実現が目的であり、これが現実に人々に何をもたらすのかを、多様な視点から考えた形跡がない。日本の刑法学はマルキシズムと同様、ドイツ観念論の系譜にある。理念が走り始めるとブレーキがかかりにくい。ここまでの統制が、医療に対して求められなければならないとすれば、他の社会システム、例えば、裁判所、検察、行政、政党、株式会社、市民団体などにも、相応の水準の統制が求められることになる。理解しやすくするためにこの状況をメディアに置き換えてみる。1)報道被害調査委員会を総務省に八条委員会として設置する。事務は総務省が所管する。2)委員会は「報道関係者、法律関係者、被害者の立場を代表する者」により構成される。3)「報道関連被害」の届出を「加害者側」の報道機関に対して義務化し、怠った場合にはペナルティを科す。4)行政処分、民事紛争及び刑事手続における判断が適切に行われるよう、調査報告書を活用できることとする。5)ジャーナリストの行政処分のための報道懲罰委員会を八条委員会として総務省に設置する。報道被害調査委員会の調査報告書を活用して、ジャーナリストとして不適切な行動があった者を処分する。
厚労省医政局の幹部には歴史的視点と判断のバックボーンとなる哲学が欠如している。そもそもわが国の死亡時医学検索制度の貧弱さこそが問題なのだという現状認識すらない。このような異様な制度は、独裁国家以外には存在しない。独裁国家ではジャーナリズムが圧殺されたばかりでなく、医療の進歩も止まった。私は、自由とか人間性というような主義主張のために、過剰な統制に反対しているのではない。この制度が結果として適切な医療の提供を阻害する方向に働くからである。 システムの自律性が保たなければそのシステムが破壊され、機能しなくなる。 「システムの作動の閉鎖性」(ニクラス・ルーマン)は、社会システム理論の事実認識であり、価値判断とは無関係にある。機能分化した個々のシステムの中枢に、外部が入り込んで支配するようになると、もはやシステムとして成立しない。例えば、自民党の総務会で市民団体、社民党、共産党の関係者が多数を占めると、自民党は成立しない。内部の統制は内部で行うべきであり、外部からの統制は裁判のように、システムの外で実施されるべきである。 そもそも厚労省は、医療を完全に支配するような強大な権力を持つことの責任を引き受けられるような状況にあるのだろうか。当否はべつにして、厚労省はメディア、政治から絶え間ない攻撃を受け続けてきた。政府の抱える深刻な紛争の多くが厚労省の所管事項である。憲法上、政治が上位にあるため、厚労省は攻撃にひたすら耐えるしかない。しばしば、攻撃側の論理を受け入れて、ときに身内を切り、現場に無理な要求をしてきた。現在の厚労省に、社会全体の利益を配慮したブレのない判断を求めることは無理であり、強大な権限を集中させることは、どう考えても危険である。 第二次試案発表から15日目の07年11月1日、ほとんど報道されなかったが、日本の医療の歴史を大きく変えかねないような重要な会議があった。自民党が、医療関係者をよんで、厚労省の第二次試案についてヒアリングを行った。厚労省、法務省、警察庁の担当者も出席した。日本医師会副会長の竹嶋康弘氏、日本病院団体協議会副議長の山本修三氏、診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業事務局長の山口徹虎の門病院院長(立場としては学会代表)が意見を述べた。私はめったなことでは驚かないが、この会議の第一報を聞いたときには、びっくりした。全員、第二次試案に賛成したのである。 なぜ驚いたか。07年4月以来、この制度について検討会で議論されてきた。ヒアリングに出席した山口徹モデル事業事務局長、日本医師会の木下勝之理事、日本病院団体協議会の堺秀人氏、の三氏は検討会の委員として、この間、議論に加わってきた。私自身、第二回検討会で意見を述べる機会を得たが、検討会では猛スピードで議論がすすめられた。議論はかみ合わず、かみ合わせようとする努力もなしに、多様な意見が言いっぱなしになった。8月24日に発表された「これまでの議論の整理」も、多様な意見が併記されていただけだった。 自民党の働きかけが、モデル事業、日本医師会、日本病院団体協議会の三者に、第二次試案に対し賛成か反対か態度を鮮明にすることを迫った。自民党の迫力に背中を押されて、三つの団体が賛成の機関決定をした。結果として、自民党に対し、大半の医師が第二次試案に賛成しているというメッセージを送った。 日本医師会はなぜ賛成したのか。前会長は、小泉自民党と対立した。現会長になって、自民党につきしたがうようになったが、それでも邪険にされつづけている。日本医師会の最大の関心事は診療報酬改定である。現在、診療報酬の改定作業が進行中である。厚労省の第二次試案に賛成することが、自民党を支えることになり、診療報酬改定で自分たちが有利になるとの期待があると考えるしか、日本医師会の行動を合理的には解釈できない。だとすれば、目先の利益を、今後数十年の医療の将来に優先させたと非難されるべきである。 よく考えると、日本医師会の行動が、目先の利益につながるのかどうかも疑わしい。自民党内にも、第二次試案に対する疑問の声はある。第二次試案の真の姿が、社会に広く理解されるようになったとき、第二次試案でよいとする説得力のある理由が用意できていなければ、日本医師会の信頼性が更に低下する。実際、一部の医師会役員は、執行部が第二次試案に賛成したことを知って激怒したときく。 私には、日本医師会が時代から取り残されているように思える。現場で働く開業医と議論すると、日本医師会の中枢を占める老人たちとの間に、越え難い溝があることがよく分かる。この危うい状況を本気で検証して、対策を講じないと日本医師会に将来はない。 現場の医師はどうすべきか。このままだと、医療制度の中心部に行政と司法と「被害者代表」が入り込み、医師は監視され、処罰が日常的に検討されることになる。この案に反対なら、それを示さないといけない。自民党の理解では、医師がこの案に賛成していることになってしまったからだ。モデル事業運営委員会、日本医師会の指導者、病院団体に意見を撤回させて、それと同時に、多くの医師がこの案に反対していることを自民党にも分かるようにしなければならない。学者は無視して、ここは、行動の対象を最大の政治力を持つ日本医師会の一部役員に絞るべきである。 第二次試案では、勤務医のみならず、開業医も厚労省のご機嫌を伺いながら、常に処分を気にしつつ診療することになろう。積極的な医療は実施しにくくなる。開業医と勤務医の共通の問題と捉えるなら、日本医師会内部で執行部に抗議をして撤回を迫るべきである。 しかし、第二次試案は開業医より、勤務医にとってはるかに深刻な問題である。第二次試案は主として勤務医の問題といってよい。産科開業医等を除くと、日本の診療所開業医は高いリスクを積極的に冒すことによって生死を乗り越えるような医療にあまり関与しない。勤務医の多くは、目の前の患者のため、リスクの高い医療を放棄できない。日本医師会には多くの勤務医が加入している。勤務医と日本医師会の関係が問題になる。端的にいうと、日本医師会が勤務医の意見を代弁してきたのかということである。勤務医は収入が少ないので、会費が安く設定されている。このためかどうか知らないが、代議員の投票権がない。発言権がないといってよい。それでも、日本医師会は医師を代表する団体であるとして振舞いたいので、勤務医の加入を推進してきた。「勤務医と開業医が対立すると、厚労省のいいように分割統治されるので、勤務医も日本医師会に加入すべきだ」という論理が使われてきたが、日本医師会は、常に、開業医の利害を代弁し、勤務医の利害には一貫して冷淡だった。最近、日本医師会の役員が、勤務医の利害を配慮してこなかったと反省を表明するようになったが、今回の問題でそれがリップサービスに過ぎないことが明白になった。どうみても、勤務医は「だしにつかわれてきた」と考えるのが自然である。 そこで勤務医のとるべき態度である。これは、日本医師会に抗議すれば済むような生易しい利害の抵触ではない。第二次試案に賛成か、反対かを確認するだけで、抗議する必要はない。生命を救うためにぎりぎりまで努力する医師を苦しめ、今後数十年の医療の混迷を決定づける案に日本医師会が賛成していることが確かならば、すべての勤務医は日本医師会を脱退して、勤務医の団体を創設すべきで
ある。 開業医と勤務医の大同団結を説く声をよく聞く。従来、その立場をとってきた友人が、今回の日本医師会の行動をみて、医師会に期待することの限界を感じたと連絡してきた。そもそも、勤務医が医師会の第二身分に据え置かれるような形が続く限り、人間の性質上、勤務医が本気で医師会と協調することはありえない。勤務医の組織ができて初めて、協調の基盤ができる。今では医師会の理不尽なルールそのものが、医師会の正当性を阻害し、開業医の利益を損ねている。 まず実施すべきことは、勤務医医師会の創設と、患者により安全な医療を提供するための、勤務環境改善を含めた体制整備である。この中には、再教育を主体とした医師の自浄のための努力も含まれる。自浄作用がないような団体が、自分の利益を言い募っても、周囲には醜く映るだけで説得力はない。臨床医として活動する医師の登録制度を自律的処分制度として活用している国が多い。全ての勤務医と一部の開業医だけでも、なんとか工夫をして、国の力を借りずに自浄のための制度を立ち上げたい。これは国民に提供する医療の水準を向上させ、かつ、医師が誇りを持って働くことにつながる。
2007年11月22日「第二次試案」から行動へ
虎の門病院 泌尿器科 小松秀樹氏
厚労省は07年10月17日に、「診療行為に関連した死亡究明等の在り方に関する試案」いわゆる「第二次試案」を発表した。内容は、検討会の座長で刑法学者前田雅英氏の「法的責任追及に活用」という主張に沿ったものだった。私はかねてより、患者と医療側の軋轢を小さくして、医療制度を崩壊から守ることに目的をおくべきだと訴えてきた。第二次試案の考え方をもとに法律が作られると、日本の医療が混迷に陥ると危惧した。そこで、10月25日、日経メディカルオンライン・MRIC上に「医療の内部に司法を持ち込むことのリスク」(http://mric.tanaka.md/2007/10/27/_vol_45.html#more)と題する文章を発表し、この問題を読み解く考え方を提示した。一気に問題を解決するために多くのことをやろうとすると、弊害が生じたときに取り返しがつかなくなる。死因究明制度の議論だけを行い、当面、医師法21条や、業務上過失致死傷はそのままにしておけばよい。問題があれば、みんなで抗議すればよい。福島県立大野病院産婦人科医逮捕事件を契機に警察・検察も考え方を変えつつある。多段階で、関係者の認識の変化を確認しつつ、時間をかけて解決していくしかない。十数年の歳月をかけるに値する重要な問題である。 その後、事態は急速に動いた。11月1日自民党の医事紛争処理の在り方検討会が開かれ、この席で、日本医師会、診療行為に関連した死因の調査分析モデル事業運営委員会の三者が第二次試案に賛成した。いずれも、事前に、第二次試案に賛成することを機関決定していた。時間的にみて、医師会・学会の会員に意見を広く聴取することなく、幹部だけで決定したものと推測された。意見を述べたのはこの三者だけだったので、参加した自民党の国会議員は、ほとんどの医師がこの案に賛成していると理解されることになり、座長である大村秀章議員(http://www.ohmura.ne.jp/index.html)は厚労省に任せる旨を表明した。さらにその翌日、日本内科学会と日本外科学会が、連名で第二次試案を高く評価するとの意見書を発表した。このように、来年の通常国会での法案提出に向けて、関係各所の意見を集約するための演出が着々と進んでいるように見えた。実際、知人の自民党議員に厚労省は第二次試案について医療界は全面的に賛成していると説明していた。 どう考えても上手な演出ではない。私はこれをチャンスと見た。医療に関する根源的な議論を、社会に見える形で展開できるきっかけになるかもしれない。従来、私は、現在の医療危機が、死生観、人が共生するための思想、規範としての法律の意義と限界、経済活動としての医療の位置づけ、民主主義の限界の問題など、社会を支配している基本的な思想の形骸化、単純化、劣化と、それに伴う考え方の分裂、齟齬に起因していると考えてきた。徹底した議論の過程がなければ、制度の議論も成立しないし、無理に制度を作ってもうまく機能しないと主張してきた。 私は、医療についての根源的な議論を喚起するために、第二次試案に賛成した日本医師会との対立を明確化することを決意した。話がそれるが、これにはもう一つ大きな目的がある。かねてより多くの仲間たちと考えてきた勤務医の団体の創設である。従来、最も厳しい医療を担ってきたのは勤務医だったが、代弁する組織がなかった。第二次試案についても、勤務医の団体があれば、ここまで事態は危機的にならなかったはずである。今回の日本医師会、病院団体、学会の安易な対応は、勤務医を立ち上がらせることになると確信した。勤務医は、指導的立場の医師たちが、苛酷な現場の状況を理解していないことを痛感するに違いない。 話を戻す。ここでは触れないが、私は、第二次試案の最大の問題点は第1ページの理念部分にあると思っている。届出の義務化、委員会の構成、報告書の扱いなどの具体的部分は、理念から派生した付随的な問題にすぎない。第二次試案は、大きな議論のきっかけになりうる。私と同じような意見を持つ数名のキーパーソンに相談し、同意を得た上で、11月17日、第107回九州医師会医学会の特別講演で、第二次試案に反対を表明し、「日本医師会の大罪」(http://mric.tanaka.md/2007/11/17/_vol_54.html#more)と題する文章を配布した。 予想通り、医療界に大きな波紋が広がり、いくつかのメディアで取り上げられた。また、日本医師会の中でも第二次試案に公然と反対する人たちが現れて、執行部を批判し始めた。私立医科大学協会の「医学振興」第65号で、獨協医科大学学長の寺野彰氏が第二次試案についての危惧を表明した。全国医学部長・病院長会議の一部メンバーも動き始めた。厚労省第二次試案に対するパブリックコメントが公表され、福岡県医師会を初めとした多くの医療関係者・団体がこの案に反対していることが明らかとなった。これは、検討会の委員が所属する日本医師会や学会のコメントとは対照的であった。 11月20日、日本医師会から私に会談の申し入れがあった。説明不足があったので、担当理事が説明したいとのことだった。社会に見えるところでの議論は大歓迎なので、口頭での説明ではなく、文書にして公表するよう求めた。 本日(11月22日)、厚労省の担当者が訪ねてきた。私は、今回の第二次試案の騒動をきっかけに、原点に戻って、総論部分の議論をしましょうと提案した。厚労省の担当者たちの善意と熱意をいささかも疑うものではないが、権力はチェックを怠ると何をし始めるかわからない危ういものであることも間違いない。今回の騒動でこの思いをさらに強くした。 結論である。現場の医師はこの問題について、意見を表明しなければならない。指導的立場の医師の行動をチェックしなければならない。従来と異なり、我々はインターネットを使える。簡単に多数の人たちと通信できる。多くの若い医師がネットを利用して、横断的な組織を作りつつある。日本の医療の根幹部分を勤務医が支えていることは間違いない。いつまでも弱者と思わずに、自信を持って行動して欲しい。流れは我々にある。
添付資料
虎ノ門病院小松秀樹氏の緊急投稿「日本医師会の大罪」の添付資料(PDF)
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